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空はどこまでも青くて、緑はどこまでも深くて、街はどこまでも広がっているのに、私の気持ちが晴れないのはどうしてなんだろう?
コンクリートに照りつける太陽を、私は仰いだ。
青春を堰き止めたまま、私の夏が終わっていく。
「どうしたの? 一ノ瀬さん?」
突然、背中から声がした。屋上の手摺を掴んだまま振り返ると、そこには涼やかな微笑を浮かべた水沢くんが立っていた。少しだけ夏の風が吹いた。
「水沢くん。いつからそこに居たの?」
「十分前くらいからかな? 君が街を眺めている間――見ていたんだ」
そう言うと水沢くんは、ゆっくりと私の隣までやってきた。
「見ていた」という言葉にドキリとする。
何を見ていたんだろう? 私のこと?
ううん、それはきっと自意識過剰。
水沢くんもきっと、この夏空とこの街の景色を見ていたんだ。
水沢くんはそのまま屋上の柵に両肘を突いて、憂いを含んだ視線を生い茂る緑の向こうへと向けた。
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