君の自由な背中には青春の翼がよく似合う

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 今日、先生にバレーボール部の退部届を出してきた。  夏休みの地区大会前に足を捻挫した。  一年生の頃から一生懸命練習して掴んだベンチ入りだったけれど、怪我で諦めざるを得なかった。そして昨日ようやくギブスは外れた。  でも退部の理由はそれだけじゃない。  もともとベンチ入りをかけて部内で妬みややっかみが一杯あった。本当はみんなで仲良く正々堂々と切磋琢磨するのが部活動だと思うし、そうしたい。でも、そうもいかないのが現実みたいだ。  私は実力もそんなになくて、ベンチ入りもギリギリみたいな感じだったから、余計に立場が難しかった。要するに人間関係に疲れたのだ。  ――空を飛ぶ背中の翼は(しがらみ)に捕われてしまった。  隣を見ると、手すりに頬杖を突いて、水沢くんが私の方を見ていた。王子様みたいに優しい微笑みを浮かべて。 「――見ていたんだよ」 「え? 水沢くん? 何を?」 「君の、背中をさ」  ドキッとする。背中の――翼?  水沢くんは何を考えているのか分からない。みんなそう言う。  でも、そんな水沢くんが言うのだ。  ……もしかして、本当に見ていてくれたのかな? 「私の――ことを?」  水沢くんは肘を突いたまま、小さく頷いた。
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