君の自由な背中には青春の翼がよく似合う

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 水沢くんに「ありがとう」って言おうとしたけれど、何故だか言葉が出なかった。だから代わりに一生懸命笑顔を作って返した。  泣いているみたいに――見えてなかったらいいな。  頑張っていたんだよ? 私、頑張っていたんだよ?  人間関係で辛いこともあったけれど、やっぱりバレーボールは好きだった。練習も頑張っていた。でも上手くいかないなぁ、って思う。  今日、退部届を出したことを後悔はしていない。  でも思っていた以上に寂しくなったのだ。  これでもう私は一人なんだなぁ,って思った。  これでもう誰も私のことを見てはくれないんだなぁ、って思った。 「一ノ瀬さんの背中にはとても綺麗なそれがあるんだ。真っ直ぐで、伸びやかで、思わず触れたくなる君自身の紐帯――」 「私自身の紐帯?」  私が聞き返すと水沢くんは無言で頷いた。  何のことだろう?  紐帯――それは絆。友情。連帯。人と人との繋がり。  きっとそれはバレーボール部の仲間たちと共に過ごした日々――  思い出が蘇る。
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