螺旋状の線の向こうに

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ノートを引き出しの中から取り出し、新しいページを開く。 罫線が引かれたノートよりも、方眼ノートを好んで使っているのだけれど、今日開いたノートは無地のノート。 特に何を書くと決めて開いたわけではない。 心の赴くままに何かを書き出したいとき、わたしは無地のノートを開く。 見開きいっぱい開いたノートの左上にボールペンの先端を置く、そこから螺旋状の線を波打つように書いていき、その末にはフックをつける。楕円を何周も重ねたフックは、お正月に食べるお節料理の黒豆に見えてきた。 お正月、新年はいつも心新たに目標を立てる。 年末には忘れてしまっているような、形だけの目標になってしまうことも多いけれど、ひとつでもその目標に向かっていけたらとしたら、上出来なんじゃないかと最近思うようになった。 これが歳を重ねることなのかと、シワの増えた手の甲を改めて視線を向ける。 このシワの分だけいろんなことを知り、いろんなことを見て、いろんなことを得、いろんなことを失ってきた。 隠し事もたくさんした。 このシワのひとつひとつに、隠している。 言えない気持ち。 言えない事実。 恨み辛みに愛に哀。 キラキラピカピカ光るそれは、夜にだけ光る星のように瞬き、誘惑をする。 言ってしまえと、放出してしまえと、お酒が振る舞われと緩むシワ。 けれど隠し事は隠し事。 お腹を抑えてグッと堪える。 そんな風に朝を迎えてノートを広げ、隠し事を隠したまま螺旋状の線を書きながら、隠し事をうまくお腹に収める。 それがわたしの隠し事。 隠し事を隠すための、わたしだけのわたしなりの方法。の、ひとつ。
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