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これは私の曾祖父 柴田龍玄に纏わる逸話です。
事が起きたのは、大正時代末期のとある日。
平穏に時が流れる日本に一体の魔物が出現しました。
その名は”禿狩族”。
奴は名前の通り、髪無人を捕らえて魔界へ連れていき、
終いには喰ってしまうと言います。
黒に染まった全長6mの身体に加えて、
その身体を超える大きさの鎌を背負う姿は、
見る者を恐れさせること間違いなし。
ですが、このときはまだ、国民は迫り来る脅威を知る由もありませんでした。
皆が異変に気が付いたのは、そこからおよそ二週間後。
ラジオで連日、髪無人が行方不明になったという類の報道がなされたのです。
この時点で累計14万人の犠牲者が出ており、
多くの人がある線を怪しみ始めていました。
これは禿狩族による仕業なのではないか、と。
禿狩族の存在は代々、日本全土で噂されていましたから。
まさか現実のものになるとは誰も思っていなかったでしょうがね。
政府は禿狩族対策本部を東京に設置し、対処法を講じました。
そして、その本部長として任命されたのが柴田龍玄です。
彼は、頭が禿げてこそいませんでしたが、相当切れる人だったようで、
彼を中心に二つの実用的な禿隠し道具が開発されました。
当時、禿は帽子で隠すぐらいしかやりようがありませんでしたから、
かなり革新的であったと言えるでしょう。
龍玄は早速、生き残っている髪無人を本部へ招集し、
禿隠し道具の試験を開始しました。
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