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4
龍玄と髪無人は無我夢中で廊下を駆け抜けました。
禿狩族も一心不乱に鎌を振るって追いかけてきます。
次第に互いの距離が縮まり、あと一歩で追いつかれそうになったそのとき、
禿狩族の後方から挑発するような声が。
「おい、禿狩族。僕を狩ってみろ!」
声の主は先ほどの職員。
禿狩族は即座に振り返り、狙いを職員に変更しました。
職員は仁王立ちをしたまま、一向に逃げようとする素振りも見せません。
禿狩族の巨大な手が職員の首を掴もうとすると、事態は急変します。
突如、禿狩族が藻掻き苦しんで倒れたのです。
しかも、奴の身体は徐々に消えかかっていました。
これは一体どういうことなのでしょうか。
この後の龍玄の言葉をよくお聞きください。
「禿狩族、お前には刀も銃も効きやしない。
だが、弱点が一つだけ。
それは髪有人を狩ってしまうこと。
禿狩族は掟で髪無人しか狩ることが許されていない。
もし間違って髪有人を狩ろうとすれば、一瞬でお前はお陀仏さ」
そう、禿狩族に打ち勝つ唯一の術は、髪有人を狩らせることだったのです。
だが、どのようにそう仕向けるのか。
それは、そのときの職員の髪に答えがありました。
彼は、龍玄の指示を受けて、髪を無色透明に染めたのです。
これにより、禿狩族は髪の有無を正常に判断できなくなった。
「目はあまり良くないようだな」
龍玄の一言と同時に禿狩族は完全に姿を消しました。
すると、連れ去られたはずの髪無人全員が一気に本部へ帰ってきたのだとか。
龍玄と職員、そして髪無人一同は、抱き合って生きる喜びを噛み締めたそうな。
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