いよいよ決行の日

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いよいよ決行の日

 翌朝早めに家を出て昼夜ぶんの食べ物と飲み物を買った。大きなリュックは目立たないように学校の用具入れに隠した。  1階の中庭に面した廊下をゆっくり歩き、明るいうちに観察をした。かすかではあるが中庭は盛り上がり丘のように見えなくもない。池は足窪池(あしくぼいけ)と同じく干あがって泥がひび割れている。  周囲をひととおり観察し、どこから中庭に入るかを決めた。  緊張で授業が頭に入らない。誰にも見つからず探せるだろうか? 探したあげく中庭で見つからなかったら次は禁足地を探すのか? 帰りに鍵はどうしよう? いろいろな心配事が頭をよぎった。  高3の秋にもなると受験の色が濃くなる。なんとなく他人にかまっていられない雰囲気が漂っている。稗田の硬い表情も受験のせいだろうと誰も気にとめない。実際、目の下にクマを作りやつれた表情の学生が増えてきた。  図書室が閉まる時間まで勉強し、用具室に隠れて人がいなくなるのを待った。  その日は都合よく、4連休を前に先生も生徒も早めに帰宅した。20時半には学校から誰もいなくなった。  校舎は静まりかえっている。教室、教員室、体育館、グラウンド全ての明かりが消えていた。  稗田はリュックを持って中庭に出て、ランタンをつけると松の盆栽が植えられている岩近くに置いた。1号棟と2号棟に挟まれ、外から見えないので安心して作業ができる。 --ちょうどその頃、坂下高校裏の禁足地の中を歩く2人がいた。
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