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他にも探索者がいる
「ひぇーおっかねぇ!
先生の無茶には付き合いきれねっすよ。」
ガスマスクごしのくぐもった声で中年男は不満を言った。
「思ったとおりのモノが出たら謝礼はいくらでもするさ。」
「せめて昼にしてくれりゃあいいのに。うへぇー薄気味悪りぃっ。ガスマスクの時間制限も気にしてくださいよ!」
男は探すモノよりも恐怖が先立つ。
「松のある場所に案内を頼む。」
工事業者でもなさそうなこの男は、滝川先生に頼まれどこからかガスマスクを調達し、昼のうちに禁足地の中を下調べしていた。
暗い中、懐中電灯だけで“松の丘”へ向かった。手入れされていない林の中は道らしき道がなく歩きにくい。時折り遠くからこちらを見つめる獣の目が光る。
「先生、着きました!」
案内された場所は、松が5本ほど生えた場所だった。周囲よりも少し小高い位置にある。
深く積もった落ち葉を払い、目印になりそうな石や杭など探したが何もない。松の木の幹にも根本の土にもそれらしき印は無かった。
手分けして松の根本を掘り起こしたが、時間の無駄に終わった。
「先生、ガスマスクが時間切れです。」
男にそう言われ、今日の探索は断念することにした。
荒い息を整え、松の幹に寄りかかると丁度学校が見えた。木と木の隙間からチラッと光る明かり。
(もう、先生方も帰宅したはずだが……)
またチラッと何がが光った。
(誰かが忍びこんでる?)
(まさか……!!)
「急いで学校に戻るぞ!」
滝川先生は急いだ。落ちた枝につまづき足を取られ慌てるほど前に進まない。
後から追いついて来た男もゼイゼイ息をしながら「先生、急ぐなら外側を回りましょう!」と声をかけた。
外側の柵を目印にすれば、早く出口にたどり着ける。2人は枯れ葉をザクザクかき分け無言で出口を目指した。
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