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化けの皮
「神社の古い引き出しに、隠されていた地図が見つかりまして。火明様がお探しになっていたものかと。一度ご覧になりませんか?」
飛島神社の宮司爽達は、火明という人物に電話をかけた。よほど地図が気になるようで明日にでも都合をつけてやって来るという。
火明寿造は、政府与党の三役を何度か務めた人物だ。彼こそが正体不明とされた隠方と呼ばれる一族の末裔である。
4年前、隠方の筆頭である老人から1人の少年を預かった。自分の息子として東京の別宅に迎え入れたが、昨年から坂下町に住まわせ坂下高校に通っている。
翌日、火明はその息子を伴って飛島神社を訪れた。
「宮司殿、本日はお招きありがとう。例のもの、息子にも見せたいと思って連れてきましたわ。龍といいます。」
「はじめまして。」
龍と紹介された少年も静かに挨拶をした。
その姿に爽達は目を奪われた。
(このエロ狸、外国人の女にでも産ませたのか?!)
髪の毛は白銀で、身長は190cmはあるだろうか。手足は長く立ち姿が絵になる。
東京でモデルをしていたというのも肯ける。
「なんとも美しい息子さんですね。」
「コレもいい女だったんでな。」
火明は小指を立てながら冗談を言って、んわぁっはっはとドラマの政治家のような笑い声をあげた。
爽達は、料理人を呼んで御馳走を作らせた。誰にも聞かれたくない話だ。神社の奥にある一室で酒を酌み交わし世間話をした。
料理の残りも少なくなった頃、火明のほうから話を切り出した。
「例の地図、早く見せてくれんかな。」
「はいはい。」
爽達は、鳥の描かれた古い地図を丁寧に広げて見せた。そして火明の様子を窺っている。
「それで、どこが“契約”の場所なんだ?」
「“契約”とは?」
「もう、とぼけんでもいいわい。オマエさんが双子の1人を預かっているんじゃろ?」
言葉に詰まり何も知らないという顔をしている爽達を見て、火明は相手を間違えたと気がついた。
さらに質問する爽達に、火明は言葉を吐き捨てて神社を後にした。
「なにが、飛島家は代々裏の権力者だ。代々ペテン師の間違いじゃないのかね!」
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