話し合いの末

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話し合いの末

「お2人はどちらも蓮行(れんぎょう)さんの血をわけた天の双子です。蓮くんは地の神のもとで育ちましたが、蓮行さんの子に違いありません。  ですから2人は入れ替わればいいのです。  育った過去は変えられませんが、これからは変えられます。逆に生きるのです。  そうすれば蓮くんと結ばれるのは大塚さんで、龍くんも好きな人と生きられます。」 「俺も稗田に賛成だ。入れ替わっても誰も損しない。要は天と地の神と人の血が全部混ざって親戚になればいいのだろう? そして子孫繁栄すれば文句なしだ。」蓮も稗田に加勢する。 「そんな単純な話しじゃないよ。ここまでどれだけの人が関わってきたと思っている?  わたしは人間界で世話になっている人を裏切りたくない。彼は人の代表として今回の“契約”に望むつもりさ。そうでなければ、わたしにここまで親切にしてくれなかっただろう。……しかし、入れ替わっても彼は人の代表にはなれるかもしれない。……でも、そんなこと、許されるのか?!」 「人の代表には、なりたいと立候補してもなれるとは限りません。試され合格した者だけが人の王として契約者となれる、そんな仕組みのようです。蓮くんと龍くんの入れ替わりとは別の問題です。」 「神を偽って無事で済むとは思えない。」 「偽るのではありません、話し合いをするんです。あなた方の父親と。」 「父親と!?」 「俺は蓮行さんに会ったことがない。生まれてすぐ地の神に引き渡されたらしいからな。」 「わたしは……父を知ってる。しかし人間の父親のように保護も指導もしない。知ってはいるけど相談できるような親しい間柄ではないんだよ。」  一瞬でも希望を持ったなら、想いを消し去ることは難しい。それが魂を揺さぶるほどの願いならば尚更だ。 「今日いっぱい、考えさせてほしい。」  龍は迷っていた。
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