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それぞれの覚悟
「なぜ、“契約”の日が秋分の日だと分かったんすか?」鈴木が稗田にたずねる。
「もともと御泊では、秋分の日に地の神様をお迎えしていました。神のいる世界と人間の世界が重なる日だそうです。遺跡に太陽光が真っ直ぐ当たる日でもあります。白鳥座も頭上に来ますしね。」
「そういう神秘的な情報と合わせて、平和への願いを届けようとかキャッチコピーをつけてチラシやSNSで拡散すればいいんじゃないかな?」鈴木が案を具体的にしていく。
「チラシはそんなに早く刷れないと思いますよ。」
「大丈夫! こういう時に使える飛島の名前!
頼み込んでみるよ。……だからさ、部長さんはちょっと休んでよ。この件はぼくらに任せてさ。」飛島が頼もしいことを言った。
実際、稗田の目はくぼみ頬も細くなった。全員こちらを向いてうなずいている。
「皆さん、ありがとう。」稗田が頭を下げた。
どうやってライトアップをするか話し合っている中、稗田は未藍と三津子に声をかけた。
「“契約”当日について、少しご相談が。」
「部長さん、あなた休めない人ねぇ〜。」と言いながら三津子も頼りにされたのが嬉しそうだ。
「飛島くんのお母さんには、白猫の祠でされたような結界?でしょうか、周りから足窪池付近を見えないように保護してもらえませんでしょうか?」
「結界!そうよく分かったわね。今回も張ればいいのね。見えないようにって難しいわね。いらっしゃった神様に足窪池が見えないんじゃ意味ないし。ま、やってみるわ。」
「私はどうすればいい?」未藍がたずねる。
「蓮くんから話があったとおもいますが、明後日から蓮くんと龍くんは立場を入れ替えます。ですから蓮くんと大塚さんが結ばれることになります。人生の一大事です。迷いはないでしょうか? 」
「迷いはないです。部長さんありがとう。叔父さん叔母さんにも説明して説得する。私まで急にいなくなったら、響子ちゃんが可愛そうだから。」
「部長さんじゃなくて、仲人さんみたいよね。」
三津子は冗談を言って笑いながら同時に涙ぐんでいた。こんな若い子たちが、大人たちが決めたことに巻き込まれ人生を賭けていることに泣けてきた。
集合は夜の7時45分、場所は足窪池。稗田と未藍以外は離れて見守ること。8時30分にライトアップ作成を決行する。解散。
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