正しい道か、破滅へ向かう道か

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正しい道か、破滅へ向かう道か

 午後、稗田は病院の祖父を見舞いに行った。あれからずっと意識はない。毎日のように病院に顔を出しているが眠ったままだ。心の中で、今日のことを報告した。  自分の決断が正しいのか破滅へ向かっているのか分からない。しかし自分以外決められる人はいなかった。誰かに頼りたい、甘えたい、逃げ出したい、そんな気持ちを何度も振り払った。爺ちゃんがいてくれたらどんなに心強かっただろう。  願ってもそれは叶わないことだった。祖父の笑顔と一緒に過ごした記憶だけを持って、病院を出た。  夕方、稗田は奥宮のお爺さんのところにいた。お爺さんは蓮と龍が入れ替わることを蓮から聞いていた。 「人の代表についても、ご報告があります。」  稗田は龍の側に人の代表がいることと、彼が選ばれなかった場合、自分たち全員を代表とすることを告げた。 「時間は8時30分、大勢の人がいっせいに光を天に向けて放ちます。平和への願いを込めて。それを全員が代表であることのメッセージとします。」 「うぅむ。こればっかりは……どう転ぶか分がんないがらな。オレも1000年前の“契約”を見できだわけじゃねぇが……光の合図だけで神様は納得しでくれるもんがな? (つづる)くんも、なかながの博打(ばくち)打ぢだわ。」 「人の王がいなかったので、ずっと考えは頭にありました。誰か1人ではなく全員が代表だと思っていたほうが住みやすい世界になるんじゃないかって。  ぼくも含め御泊(おどまり)の若い人は血が薄まって神の声が聞こえなくなったようです。  滝川先生もそうかもしれません。  そのことが悪いんじゃなくて、血に頼る時代のほうが終わったのではないでしょうか?  血脈ではなく人の想いのほうが大切なんじゃないかって思ったんです。 『発見そのものが、次の扉を開く鍵』  ぼくは、奥宮のお爺さんに教えてもらった言葉を信じてみます。」 「そうだな、やってみるしか無いが。」
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