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質問は慎重に
滝川先生ですら『松の丘』について全く分からなかった。代わりに神之森の地名について教えてくれた。
「学校の裏に禁足地があるのは知っているだろう? 神之森という地名はこの場所から来ているんだよ。
この森で神に出会った。または神の声を聞き気がふれた。命を奪われたという伝説が残っている。
以前調査員が立ち入り、地下のガスにやられ亡くなった人もいたようだ。そのため神ではなくガスによる幻覚ではないかと今は言われている。危険だから柵で囲って人が入れないようになっているんだよ。
で、今度は君たち何を調べているんだ?」
「調べているというより知識として入れておきたくて。もし、禁足地に入るとしたらどんな準備が必要でしょうか?」
「いやいや、稗田くんあそこは止めたほうがいいよ。……そうだなぁ。専門の業者を読んでガスが発生していないか調べながら慎重に入ることになるかな。
豪族の神宝みたいに、とんでもなく貴重なものが眠っているなら業者を手配してもいいぞ。」
「そんな話じゃないんですよ。ありがとうございました。」
先生にお礼を言って資料室を後にした。
校長先生だった人が、そんな危険な場所に生玉を隠すだろうか?違う角度からも考えてみよう。
稗田は自転車に乗らず考えながら歩いた。
--資料室には滝川先生が残っている。稗田が帰り際、本を返却したあたりを探っている。
他よりほんの少しだけ飛び出した60周年記念誌を取り出し『松の丘』という言葉が、どこかにないか端から端まで目で追った。
滝川先生は校歌の中にそれを見つけ、
「豪族の神宝。見つかっちゃったら、どうする俺?」と呟いた。生徒に見せることのない表情をしていた。
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