まことしやかに

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まことしやかに

 天下を狙う者は陽方(ようかた)隠方(いんかた)を味方につけろ。  そんな言い伝えが、権力者の間ではまことしやかに囁かれ続けてきた。  陽方とは、親族、知人、地元の有力者など表だって支援をしてくれる人々のことである。  隠方とは、神に近いとされる古代より暗躍してきた正体不明の一族のことである。隠方の後ろ盾があるかないかで(まつりごと)が大きく変わったという。 ”天下人の裏に隠方あり”  本当かどうかわからない言い伝えを信じて、古代より権力者たちは御泊(おどまり)雙星(そうせい)神社に通った。  御泊は通称隠里(かくれざと)と呼ばれ、その名を耳にしたことはあっても、訪れた人物には会ったことがない、そんな幻のような集落だった。  雙星神社に通う権力者たちは、御泊にたどり着けるかどうかでまず資質を試される。  御泊に案内してくれる人物を見つける人脈、獣に襲われない知識と運、妖怪に惑わされない精神力、山を登りきる体力も必要とされた。  しかし、権力の座についた者誰一人として口外しなかったため、隠方と呼ばれる一族が本当に存在するのか、隠方を味方につけて地位を得られたのか長年謎のままだった。
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