ロク

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『お店に先入ってるね。』 もうずっと使ってなかった連絡先から届くメッセージを見つめる。 先輩の連絡先を消さなかったのは未練のためだろうけど、もしかしたら今日のためかもしれない。 ...でも今日終わったら消す。 連絡先も消して、ケジメもつけて、本当の意味で忘れてやる。 深呼吸を2度してから店に入った。 店員に案内され席に連れてかれる。 「久しぶり、克樹。」 「どうも。」 にこっと微笑むその仕草は何も変わっていない。 けど、 「あの、今日はわざわざありがとうございます。」 「いいよ。僕もずっと克樹くんのこと気になってたからさ。元気にしてる?」 「はい。それなりに。」 少し他愛もない世間話をしながら注文を済ませる。 「奥さん、元気ですか?」 「うん、ミホは元気だよ。最近は料理にはまってるみたい。」 こういうちょっとした先輩の幸せを知るごとに胸が少し痛む。 けど、今日はそれほどでもない。 「先輩、どうして俺と付き合おうと思ったんですか?」
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