ロク

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「どうしてって...もちろん好き、だったからだよ。」 「ちなみに、どんなところですか?」 「えっと、無愛想にみえてすごく優しいところとか、俺がゲイって噂が流れてもなにも気にしないでいてくれたところとか...。」 そうやって話している先輩は嘘をついているようには見えなかった。 大学時代を懐かしみながら話しているような顔をしている。 先輩が俺のことを好きだったのが嘘じゃないなら、それで充分だと思えた。 忘れてやる!と意気込んでいた数十分前よりずいぶんと穏やかな気持ちだ。 「あの、今日先輩に言いたいことがあって。」 「うん、何かはあるんだろうなって思ってた。なあに?」 「俺、先輩が初恋の人でした。でも、、」 「うん、」 「先輩よりも好きだと思える人を見つけました。」 「そっか。おめでとう。」 そう言って微笑んだ先輩をまじまじと見る。やっぱり昔ほど可愛いとは思えなかった。 けれど先輩が老けたとかそういうわけじゃないだろう。 変わったとしたら、それは俺の方だ。
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