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「ちなみに、克樹くんの好きな人ってどんな感じの人なの?」
言いたかったことが言えてすっきりした後、のんびり先輩と話していた。
「かなり面白い人ですよ。出会ったことない人種というか。」
「へぇ!」
「家にぬいぐるみがいっぱいあったり、酔うと会話が出来なくなったり、ドアスコープから俺のこと覗いたりしてました。」
青柳さんの行動を思い出しながら喋っていると、笑いだしそうになった。
「えーと、変人にしか聞こえないような。」
先輩は青柳さんがどんな人なのか想像つかないらしく目をパチパチとさせている。
「ははっ。そうかもしれないですね。でもなんでか可愛く見えるんです。...そんでからかいたくなるんですよね。」
「えっ。克樹くんってSだったの?!」
「いや、どっちかっていうと好きな人をからかいたくなる男子に似てる感じですね。」
今なら、ああいう男子の気持ちを理解できる自信もある。
「意外!でもなんというかすごく好きなんだね。」
「はい。俺、好きな人からかいたくなるタイプだったみたいです。」
先輩は何それーと言いながら楽しそうに笑っている。
「先輩は奥さんのことどうなんですか?」
「んーと、ね。恋愛的に好きになりたいって思ってる。」
先輩は物心ついた頃から同性愛者だったらしい。
だから、女性は好きになるのが難しいのだろう。
「誰かに強制されて、とかじゃなくてさ。俺がこの人を好きになりたいって思ったんだ。」
けれど先輩の目はとても優しくて、それが奥さんのことを話しているからだとすれば充分愛があるようにみえた。
「人としては彼女のことすごく好きなんだ。恋愛的にも好きとは言いきれないけれど、好きの状態に1番近いと思う。」
好き。というハッキリとした言葉はないけれど、大切に想っていることは伝わってくる。
「偉そうかもしれないですけど、応援してます。」
「うん、ありがとう。」
料理も食べ終え、話も終えて、俺たちは店を出ることにした。
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