主人公はただ一人

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主人公はただ一人

 脇役キャラを考えるのは好きなのですが、なぜか主人公のキャラ設定には行き詰る。そんな橘やよいです。でも主人公、大事なんですよね。一番大事。  今回はそんなお話です! 「主人公はただ一人」  群像劇の小説は読んだことありますか? もしくは中心人物がその都度変わる短編連作とか。視点がコロコロ変わるお話たちです。  たとえば。 一章「私はA子。クール男子B男のことが好きで、幼なじみのC郎に恋愛相談しながら、なんとかB男に告白して付き合うことに! やった!」【A子視点、告白編】 二章「俺はB男。A子に告白されて付き合うことになった。今日ははじめてのデートだ。正直いうと……、めっっっっちゃ緊張している! 俺がクールなんてそんなの嘘だ。どうしよう。死にそう!」【B男視点、初デート編】 三章「僕はC郎。A子がB男と付き合って、デートに行ったみたいだ。A子が楽しそうだから、僕も嬉しい。でも本当は、僕だってA子のことが好きだったんだ。だからちょっと寂しいな……」【C郎視点、初デート編別視点】  みたいな感じですね。  A子から見たB男はクールだけど、実は初心。A子にとっては優しい協力者だったC郎は実は……。  一人の視点に固定していると見えてこないお話が書けるのって、楽しいですよね。読む側としても好きです。  こんな感じで、章ごとに中心人物が変わると、主人公いっぱいいるじゃんと思いますか? こういうお話を読んだ経験がある方は思い出してみてください。感情移入するのは、A子、B男、C郎の誰でしょう? 一人? 全員?  考えました?  私の回答は、「A子のみ」です。  全員に感情移入するわ、という意見があってもいいと思いますが、私の中ではA子が圧倒的な主人公として、特別枠の王者の椅子にふんぞり返ります。  たぶん、おそらく、同じように考える読者は多いのではと思っています(理由は後半で)。ですが、いったん私個人の考えを書きますね。  私はまず、最初に出てくる登場人物に感情移入します。A子に寄り添って物語を読む。そうすると、次にB男の視点になったとしても、A子のそばから離れられないんです。応援したいのはA子。頑張れA子。B男はデート緊張しているらしいけど、A子大丈夫か!  ここでちょっと前の文章を振り返ってみます。 「A子から見たB男はクールだけど、実は初心。A子にとっては優しい協力者だったC郎は実は……」  お気づきでしょうか。A子が基準なんです。私(読者)はA子の視点から物語を見ています。A子は特別枠なんです。  で、そうなると、何が起こるのか。  A子に出番がないと「早くA子出して!」ってなるんですね。私の分身はA子なので。愛着のあるA子に出てきてほしい。まったくA子が出ないと、よその家の話を聞いているような気分になります。  逆にB男視点でもC郎視点でも、A子に出番を作ってくれると、「A子だー!」と実家のような安心感を覚えて読み進められます。  視点がどれだけ変わっても、主人公は一人だけなんですね。  さて、皆さまはいかがでしょうか。  主人公はたくさんいる、と思う方も中にはいるかもしれませんが、私に共感してくれる方も多いのかなと思います。前半でじらしたその理由についても、お伝えしましょう。  私は最近、なぜか連作短編や群像劇を読むことが多かったんです。偶然にも手に取る本が五冊連続くらいで、章ごとに視点が変わる小説でした。不思議。  で、その小説全部、構成が同じなんです。 一章 A子視点 二章 B男視点 三章 C郎視点 四章 A子視点 ←ココ!  A子で始まり、A子で終わる。  こればっかりでした。  この構成だとすっきりするんです。たまたまかもしれませんが五冊すべてこうだと、世間的にも「A子を最重要に扱え」という意識があるのではと感じました。  作者にとってはA子もB男もC郎もみんな大事な人物だと思いますが、読者にとってはA子が特別枠に君臨している。それを覚えておくのが大事ではないでしょうか。A子の扱いがぞんざいになると、読者が(すくなくとも私が)ヤキモキしてしまいます。  ちなみに、これは群像劇や短編連作でなくても言えます。ついつい脇役を掘り下げすぎて、主人公空気になることはありませんか?  脇役も大事です。私は脇役大好き、なんなら推しはほぼ脇役、主人公が推しになったことってないかもしれない。ですが! 読者にとっては主人公が何よりも最重要。主人公を輝かせましょう。  まずは主人公が輝く。そして脇役も輝く。  そういうお話を目指したい!  さて、今日も執筆頑張るぞー! まとめ ・読者は最初に出てくる登場人物に感情移入する。その人物が主人公。読者の分身。 ・主人公を輝かせよう。だって主人公だもの!
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