緑深き森で

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 ――――ナユタ。……ナユタ。  ――――お前がいなければ、俺の心臓は動かない。  ナユタ、逢いたい。    森を抜ける。鬱蒼と生い茂る木々の隙間から燦々と陽光が差し込む窪地に、彼はいた。  朽ちかけた(くすのき)の巨木に寄り添うようにして、彼はそこに存在していた。  しっとりと閉じられた目蓋を、沼に反射した光がキラキラと照らし、神秘的な美しさを生み出している。  流れる銀髪を、幼さの中に滲む妖艶な容貌を、華奢な肢体をゆっくりと目でなぞった那由多は、固く閉じられた目蓋の奥に隠された瞳の色が何色か、思い出していた。 「……っ」  溢れる想いが、奔流のようにせめぎ合って心を支配する。  痛む喉を押さえながら、震える指先を伸ばす。  柔らかな銀髪に触れた瞬間、自然とその名を口にしていた。
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