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「生徒会の仕事だけに絞れば? 別に全部がんばらなくたって恥じゃないだろ。澪はこっちに帰ってきたばっかりなんだから」
頭を撫でられ、うんとうなずく。それからカーテンで仕切られた狭いベッドの上で、冷たく乾き始めた練習着のまま少し泣いた。
オーストリアは北海道より高い緯度にあって乾燥している。澪のように長年寒い国にいると汗腺の働きが鈍くなってしまうそうだ。病院からは、蒸し暑さに完全に慣れるには二度ほど夏を経験しないと無理だと言われた。
その説明を聞いて夏中鬱になるほど悩んで、結局、秋の始めに部活を辞めた。勧誘された時のように引き留められはしなくて――悟った。
ああ、もう必要とされてなかったんだ、私は。
それからすぐ妙な浮遊感に心がざわつくようになって、気づいたら尋常でない高さにまで軽々と跳べるようになっていた――。
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