58人が本棚に入れています
本棚に追加
駅前の見慣れたチェーン店の居酒屋に入ると、すでにその男性は足を組み優雅に酒の入ったグラスに口をつけていた。
「玲央」
山下優が名前を呼び軽く手を上げると、グラスから唇を離して玲央と呼ばれた男は涼しげに目を細めた。
「先輩、遅いですよ」
「ごめん、帰り際に上司に捕まっちゃってさ」
チェーン店の大衆居酒屋にはもったいないほど玲央は白く輝いて見えたが、今に始まったことではない。初めて会ったときからずっとこうだったと優は高校生時代に思いを馳せる。
初めて出会ったのは、高校三年生の茹だるような暑い夏の日だった。
最初のコメントを投稿しよう!