六章.サロン・ルポゼの新人ちゃん

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「”私なんか”っていうセリフは、井手みなみには似合わないわ。自分で自分を下げないで。自信があれば、コンペティションに優勝だってできる。私はそう思ってるから」  自信があれば、スイの彼女にも勝つことができる……。  みなみは今日限りで、『私なんか』というセリフを、封印することに決めた。そしてプライドを持って、施術することも心に誓った。  この瞬間から、みなみの世界が広がったみたいだった。 「オーナー、すいませんでした。私自信を持ちます! そして、このサロンにトロフィーを持ち帰ります!」  高らかに宣言したみなみの顔を見て、江頭オーナーの顔も気合が入ったように引き締まった。  かと思うと、すぐにその顔つきは崩れ、みなみの肩に寄り掛かるようにして話題を変える。 「それで、どうだったの? スイ君の彼女」 「もう、オーナー絶対聞くと思いました。どうって……すごい綺麗な方でしたよ」 「そうじゃなくて、大丈夫だったの? 井手っちは」 「え……」  あの日、みなみはスイの前で泣いてしまった。  その時のシーンが、江頭オーナーの言葉によって思い出される。  みなみが焦がれている人と、好き同士でいられることが、何よりも羨ましくて、歯痒さに苛まれて……堪えていた涙を抑えることができなかったのだ。  その時のことは、それ以来スイと話してはいなかった。  次の日からは、いつも通りの距離感に戻って接していた。 「私、泣いちゃいました。スイさんの前で」
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