一章.サロン・ルポゼでハミングを

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「いっ……」  芝野宮がビクッと反応する。  だが、すぐにまた目を瞑り、寝息を立て始めた。  中指から小指にかけての付け根のライン。ここにグッと優しく圧をかけていった際に見られた反応。  このラインは、目や耳と反射していると言われている。  スイは、さっき芝野宮が言っていたことを思い出した。  新人の子……。  やはり、この感覚器官に反応があるということは、相当敏感になっているということだ。  目と耳で新人の子の動きを感知してしまう。  そしてその行動がいちいち癪に障ってしまい、イライラが募る。  何でそこまでイライラするのだろうか。  最初から仕事ができないのは、ごく当たり前なはずなのに。  言われたことをガムシャラにこなそうとして、結果的にできなかっただけじゃないのか? それとも、男にはわかり得ない感情なのか……。  指を動かしながら、スイは頭の隅の方で、芝野宮の発言の意図を考え込んでいる。  思えば、芝野宮は息子に対してもイライラが募っていた。  期待通りの道を歩かなかったからか。  でもその新人の子と似ていて、男らしくないと言っていた。  何がイライラの原因の根本なのか、スイは自分なりに整理をしてみた……。
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