六章.サロン・ルポゼの新人ちゃん

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「私もスイ君も、井手っちのことを大事に思ってるの、わかるよね?」 「はい、それは伝わってます」  笑っていない目が、少しずつ垂れていって、いつもの江頭オーナーの温和な顔つきに戻った。 「何で大事に思っているか……それはね、井手っちにはパワーを与える能力があるからよ」 「パワー……ですか?」 「そう。私たちは、指でエネルギーを伝えるの。自分で自分を否定したら、それが指先に伝わって、そしてお客様に伝わる。そしたらそのお客様は二度と、サロンを訪れないわ。不満足に思うもの」  江頭オーナーの話を聞きながら、みなみは自分の指先を見つめていた。  もしかしたら……みなみ自身の施術によって、お客様を離してしまうのではないか……そんな強烈な不安が襲ってきて、指先に緊張が走った。 「だけどね」 「はい」 「井手っちには、人を元気にする力がある。井手っちが受付でお客様と話している時、気づかない間に皆笑顔になっているの。そういう人は、絶対立派なセラピストになれる、保証するわ」  江頭オーナーの熱い言葉にみなみの涙腺が緩むが、涙は落ちない。  その代わりに、緊張で震えていた指先に力が戻った。 「技術ももちろん大事だけど、一番大事なのはね、井手みなみというセラピストに施術をしてもらいたいって、思ってもらえるかどうかなの。絶対そう感じてもらえるという自信が私たちにはある、だから大事だと思ってる」 「オーナー……」
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