六章.サロン・ルポゼの新人ちゃん

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「よし、じゃあ始めてもらおうか」  スイがチェアに腰掛け、ゆっくりとリクライニングする。  みなみはセラピストとして、施術の準備を進めていた。  隣では、その様子をじーっと見つめる江頭オーナーの姿がある。 「井手っちの接客は言うことがないからね、施術の方をしっかりやっていくわよ」  スイの足に触れるのは、通算何回目だろうか。  みなみが学校に通っている間も、よく課題が出る度に足を貸してもらっていた。  踵にできた小さな魚の目も、今では見慣れたものだった。  緊張を抱えながらも、オイルのついた手で刺激を加える。 「井手っち、もう少し支え手をがっちりして」 「みなみちゃん、そこのポイントは強めでも構わないよ」  二段構えのアドバイスは飲み込むのが精一杯で、指の動きをまじまじと見られるのは恥ずかしいと感じてしまった。  まだまだ未熟なことに、恥と憤りを覚えた。 「でも全然いい感じじゃない? ねえ、スイ君?」 「はい、正直驚きました。だいぶ上手ですよ」  緊張で指が思うように進められていないと感じていたけど、どうやらみなみが思っているほど、ダメダメではないみたいだ。  結局その時間は終電近くまで続いて、全員が没頭していた。  数をこなすことで、指の動きが滑らかになったことを実感し、みなみはコツを掴んだ気になれた。  序盤に感じた悔しさもとっくに忘れて、ただただ施術の楽しさに満ち溢れている。    絶対優勝すると、みなみは心で誓った。
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