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「みなみ君」
後ろから、どこかで聞いたことのあるような声が、みなみを呼んだ。
嫌な予感が、頭を過ぎる。
振り返ると、予想通り目つきの悪いあの男が、みなみの目の前に立っていた。
「こないだはどうも。ルルシュ渋谷本店、店長の樋爪です」
二階堂のハーブ園で知り合った、樋爪。
知り合った日から樋爪の印象はまるで良いものではなく、居心地の悪い気がしてならない。
「みなみ君、ライセンス取れたんだってね。とてもめでたいことだ。だが、一流を目指すなら適した環境に身を置くべきだよ」
「ちょっと樋爪さん、何が言いたいのよ」
横から、江頭オーナーが口を出してくれる。
喧嘩腰に立ち向かった江頭オーナーの反応を見て、江頭オーナーも樋爪のことが嫌いなんだと、みなみは簡単に把握することができた。
「これは失礼。まあ、このコンペティションではっきりわかるだろう。君はルルシュに来た方が成長するってね」
捨て台詞を吐いたその背中の向こう側には、今日出場するであろうルルシュのセラピスト達が準備をしている。
みなみの目線の先には当然、帆足優愛がいた。
間違いなく優勝候補で、みなみが倒さなければいけない相手だ。
「まったく失礼しちゃうわね。私昔からあの樋爪ってやつ大っ嫌いなの」
江頭オーナーの声は右から左へ流れ、みなみはユアの方を見入ってしまっていた。
みなみの強い目線を感じ取ったユアが、みなみに向けてニコッと会釈をしてくる。
「あれがスイ君の彼女ね。本当だ、綺麗な顔してるわ」
「オーナー、今は私のことを盛り下げないでください」
ごめんごめんと謝る江頭オーナーに、みなみは呆れ笑いを浮かべていると、肝心なことに気がついてしまった。
「そういえば、スイさんは……?」
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