六章.サロン・ルポゼの新人ちゃん

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「あ、スイ君ね! なんか用事があって遅れるそうよ!」  急な問いかけに、驚いた様子の江頭オーナー。  はっきりと答えてくれたけど、目が泳いでいるように感じてしまった。  何かを隠している気がする……みなみはその何かを考えてみても、全く見当がつかなかった。  変な思考になるのを防ぐために、空気を読んで、今は触れないことに決めた。 「リフレクソロジー部門に出場のセラピストの方は、準備をしてください!」  進行役の女性が、フロア全体に聞こえるような声で叫ぶ。  その声で、みなみの身が引き締まった。  みなみは江頭オーナーから受け取った参加番号を握りしめ、施術を行う準備を始める。 「井手っち、私はこの先行けないから、頑張ってきてね! いつも通りやれば大丈夫だから!」  江頭オーナーの真っ直ぐな目を見つめながらコクッと頷き、リフレクソロジーエリアの方へ足を進める。  そのエリアにはチェアが二十台くらいあって、一斉に施術を始めるみたいだった。  施術を受ける審査員が二十名と、接客スキルを見て回る監察官が二人。  技術ポイントと接客ポイントの合計で争うということだ。  つまり、今回参加するリフレクソロジー専門のセラピストは、二十人ということになる。  みなみは、どうか良い審査員に当たりますようにと、心で願った。 「では、参加番号の書かれたチェアへ進んでください」  その合図をきっかけに、全員がこわばった顔で各々のチェアまで動き出した。  もちろんみなみも、ガチガチな顔で持ち場につく。  少し経った後に、ふくよかなスタイルのおじさんが、ゆっくりと近づいてきた。 「よろしくお願いします。これ、今日のシートです。コンサルテーションから始めてください」 「は、はい!」  まさか……こんなにいきなり始まるとは思わなかったので、みなみは取り乱しそうになってしまった。
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