一章.サロン・ルポゼでハミングを

5/22
前へ
/197ページ
次へ
sheet1 芝野宮 幸恵(しばのみや ゆきえ) ・性別 女性 ・年齢 五十代 ・既婚 子供は一人 ・職業 会社員(役員) ・睡眠時間 五時間 ・食生活 きっちり三食 ・悩み 最近よく眠れないこと ・その他 ついイライラしてしまう 「お待たせいたしました。施術を担当いたします、首藤と申します」  本日最初のお客様。スイは丁重な接客を心で誓い、片膝立ちでお辞儀をした。  素早くシートに目を通し、軽く質問を投げかける。 「お子様がいらっしゃるのですね」 「ええ、でももう自立しているの。家には主人と私の二人だけ」 「そうなんですね。ではだいぶ楽になりましたか?」 「そうねぇ、前はお弁当作ったり洗濯物も多かったりで大変だったわ。仕事しながらだと尚更ね」  会話をしながら、スイは芝野宮の顔をじっくりと観察していた。  表情やしぐさは、小さな感情の揺れや本音が垣間見えるからだ。  もちろん失礼のないように。あまりにもじーっと見るのは、不自然過ぎる。 「ウチの子、男なんだけどさ。昔から全然言うこと聞かなくて」  そう言うと同時に、眉間に皺が寄り始める。芝野宮のトークに、エンジンがかかった音がした。
/197ページ

最初のコメントを投稿しよう!

187人が本棚に入れています
本棚に追加