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「あ、今日はありがとうね! またおいでよ!」
樋爪と話しているのにも関わらず、二階堂がまたもや空間を切り裂くように言ってのける。
みなみも、これくらいハートの強い大人になりたいものだと、少しだけ二階堂を尊敬してしまった。
スイは二階堂に一回だけ会釈をしてから、静かにレストハウスの扉を開けた。
「あ、みなみ君! コンペティションで会おう!」
樋爪が投げかけた言葉に見せたみなみの笑顔は、どう見ても苦笑いだった。
結果としては長居に巻き込まれなくて良かっただろう……みなみは心底ホッとしている。
ひと仕事終えて落ち着いている電車の中で、二人は今日のことを振り返った。
「ユアさんって、彼女さんですよね?」
「うん、まさかコンペティションに出るなんて、聞いてなかったな」
「あの、コンペティションって?」
「コンペティションはね、日本一のセラピストを決める大会のことなんだ。無作為に選出された試験官が施術を受けて、技術ポイントと接客ポイントを総合的に見て順位をつける。去年は俺が優勝したんだけど」
「え、スイさんさすが! 今年は出ないんですか?」
「結構疲れるからね。それにユアが出るなら尚更かな。競いたくないしね」
確かに、カップル同士争うのは、シンプルに考えて嫌なことだろう……みなみも想像くらいはできる。
でも、あの一流サロンでスイの彼女が勤めているなんて、みなみは全く聞いていなかった。
そう考えると、心の内で燃えてくるものがある。
「スイさん、そのコンペティション私も出られるんですよね?」
「え? まあ、資格が取れたらプロのセラピストだからね。来月の資格試験が受かったら出れるよ」
「そうですか、じゃあ私出るので。サポートよろしくお願いします」
「ええ!?」
……外はすっかり暗くなっている。
景色は暗闇で全く見ることができず、窓にはみなみの発言で慌てふためく、面白いスイの顔が映っていた。
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