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「ああ、どうもありがとう。ごめんね、面倒をかけてしまって」
「いいえ、とんでもございません! またいつでも来てください!」
「元気で良いね。今日はこのサロンに勇気づけられたよ。ねえお兄さん?」
急に話を振られてビクッとしたスイだったが、即座に笑顔で応対した。
顔を上げて進藤の方を見ると、微かに目で合図しているのを感じ取る。
「それは何よりです。またお待ちしております。お仕事、頑張ってください」
「ありがとう、必ずまた来るよ。そっちも頑張ってね、お二人さん」
『お二人さん』という言葉が、印象的になるような言い方だった。
その細かい工夫に、みなみは気づいていない。
結局最後は、進藤にイニシアティブを握られてしまったのだ。
「ありがとうございました!」
進藤が角を曲がるまで、頭を下げているこの瞬間も、さっきの言葉がスイの頭の中を巡っていた。
隣にみなみがいることがその要因の一つだが、考えてもみなかったことを指摘されて混乱している状態だ。
頭を上げて曲がり角を見てみると、進藤とすれ違いで、見慣れた顔がそこに現れた。
「ユ、ユア!?」
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