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「ん、どうしたの? みなみさん?」
「帆足さんも……コンペティション出るんですよね?」
コンペティションで、二人は会うことになる……そう考えると、先に挨拶を済ませておいて良かったのかもしれない。
みなみの言葉で、スイは一つ納得ができた。
それよりも前に、資格試験があることをみなみが忘れていそうで、スイはすぐにまた心配になった。
「私も、出場するんです。その時は是非、よろしくお願いします!」
「あ、そうなんだ! よろしくね! でもその前に資格試験があるんじゃない?」
「そうでした、すっかり忘れてた」
みなみが案の定のリアクションをして、スイはガクッと肩を落とした。
あとでもう一度、資格試験の重要さを説くことを心に決める。
「まあスイもいるし、合格するでしょ。そうなったら真剣勝負、絶対負けないからね!」
「はい! 望むところです!」
「じゃあそろそろ帰るね。ごめんね、突然お邪魔して。また連絡するから」
「わかった。気をつけて」
今まで来た道を振り返り、軽快に歩き始めた背中を見送る。
十分な春風を感じたみなみは、その場では何も言わないままサロンの中に入った。
無言のまま戻るその姿に、スイは変な感覚を覚える。
いつもお見送りの後は、みなみと色々会話しながらサロンに戻るはずなのに、今日はどうしたのだろうか。
「スイさん……」
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