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「船長、もういいですよ。仮眠に入ってください」
「彼女さんとどうぞ、ごゆっくり」
もうすぐ海峡を抜けて大きな海原、周防灘に出るからと、深夜と朝方にかけてのシフトになっているという圭太朗に休むように彼らが勧める。
「じゃあ、あとは頼んだぞ」
「念願のブリッジが見られて嬉しかったです。大事な出航時にお邪魔いたしました。ありがとうございます」
梓の挨拶にも彼らは優しく笑ってくれた。
夏シャツ制服の圭太朗に肩を抱かれて、梓はブリッジを出た。
「そこ、俺の船長室。ちょっと一緒に休もうか」
「いいの、仮眠の時間でしょう。私も下の客室で眠るよ」
三好社長と本多先輩はベッドがある一等客室で同部屋宿泊、梓は一般の二段ベッドを取っていてそこで一泊することになっていた。
「せっかく久しぶりに会ったんだから、ゆっくり話したいよ。それから眠るよ」
二十日間勤務の彼に久しぶりに会えたのは本当のことだったから、梓もお誘いに甘えてしまった。
ブリッジ通路の奥にその部屋があった。船長室というプレートが貼られているドアを彼が開ける。
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