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「本多君、そろそろ真田さんがいらっしゃる時間だから、ちゃんとして」
滝田マネージャーに促され、本多先輩がふらっと薄暗い部屋から出てきた。
「今回もギリギリだったね。相変わらず」
「うるさいな。最後までイメージが固まらなかったんだよ。こう何度も指名されるとワンパターンになりそうだ」
「大丈夫よ。今回も綺麗に仕上がっていたじゃない」
「そうかな」
グレンチェックのタイトスカートに白いブラウス、そしてスカーフという季節に合わせたお洒落が素敵な滝田マネージャーが、本多先輩を上手に部屋から連れ出す。
もっさりしていた本多先輩も身なりをきちんと整えて出てきた。そんな不機嫌そうな男の『ご機嫌を取る』かのように大事に扱って持ち上げて、上手く扱えるのはこの琴子マネージャーだけ。
あんな子供をあやすように彼を上手に扱うその様子を見ると、さすが琴子さんと感心、そして、お疲れ様ですと頭が下がってしまう。
窓際にある商談用のテーブルへと、琴子マネージャーと本多先輩が辿り着くと、窓の向こうの駐車場に黒いスポーツカーが入ってきた。
「あら……、あの車?」
「ん? セリカT200だな」
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