1.鉄子、スイッチオン

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本多(ほんだ)君、そろそろ真田さんがいらっしゃる時間だから、ちゃんとして」  滝田マネージャーに促され、本多先輩がふらっと薄暗い部屋から出てきた。 「今回もギリギリだったね。相変わらず」 「うるさいな。最後までイメージが固まらなかったんだよ。こう何度も指名されるとワンパターンになりそうだ」 「大丈夫よ。今回も綺麗に仕上がっていたじゃない」 「そうかな」  グレンチェックのタイトスカートに白いブラウス、そしてスカーフという季節に合わせたお洒落が素敵な滝田マネージャーが、本多先輩を上手に部屋から連れ出す。  もっさりしていた本多先輩も身なりをきちんと整えて出てきた。そんな不機嫌そうな男の『ご機嫌を取る』かのように大事に扱って持ち上げて、上手く扱えるのはこの琴子マネージャーだけ。  あんな子供をあやすように彼を上手に扱うその様子を見ると、さすが琴子さんと感心、そして、お疲れ様ですと頭が下がってしまう。  窓際にある商談用のテーブルへと、琴子マネージャーと本多先輩が辿り着くと、窓の向こうの駐車場に黒いスポーツカーが入ってきた。 「あら……、あの車?」 「ん? セリカT200だな」
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