1.鉄子、スイッチオン

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 琴子マネージャーと本多先輩が一緒に窓の外へと見入る。 「うちの社長のセリカではないわね。三好社長のセリカは白だし、」 「真田社長は白のアルファロメオだろ」  そこで本多先輩が呆れた顔で琴子先輩を見下ろした。 「まさか、また旦那が新しい車を買ったとかさ」 「えー、そんなことないもの! 確かに思い立ったらロケットのように即実行しちゃう旦那さんだけれど、あの人は日産車好きだし、買うなら私にもひと言言ってくれるはずだもの」 「トヨタ車ならレビン86は持っているのにな。セリカも欲しくなったんじゃないのか。だってさ、琴子の誕生日にフェラーリを借りて乗せてくれたんだろ。買ってなくてもあれ、滝田社長だろ」  見慣れない真っ黒なスポーツカーが入ってくるとなったならば、乗ってやってきそうな男は、琴子マネージャーの『車の整備屋』を経営している旦那さんしかいないと、やいやいとふたりが言い合っている。
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