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梓はそんな先輩ふたりを後ろから眺めていていつも思う。すごい牽制し合って仕事の言い合いを激しくするふたりは、どこか戦友のようで同級生のようで、息が合いすぎている。でも男と女の匂い一切なし。どうやってこの関係を築いてきたのかなと不思議だった。
だけれど、梓も興奮!
「黒のセリカ――!」
そばに置いていたスケッチブックを開いて、窓に目を懲らして描き始める。
「おいおい、鉄子のスイッチがはいった」
本多先輩が呆れて、でも笑ってくれる。
琴子マネージャーもくすっと優しく微笑んでくれる。
だが、その黒いスポーツカーから降りてきた人を見て、また本多先輩と琴子マネージャーがハッとした顔になる。
「え、真田社長よ。いつもと車が違う……」
「もうひとり。運転席から降りてきた」
クライアントの真田社長が助手席から降りてきて、運転席から降りてきた男性は誰も知らない人。
真田珈琲の社長の車は、白のアルファロメオ。なのに今日は見知らぬ男性の運転で、その男性の車でデザイン事務所にやってきた。
本多先輩と琴子先輩が急に仕事の顔になる。ふたり一緒に事務所の玄関まで迎えに行く。梓もそのあとをついていく。
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