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ガラスドアが開き、真田社長が現れる。
「いらっしゃいませ、真田様。お待ちしておりました」
琴子マネージャーが恭しく出迎える。普段は接客など我関せずの本多先輩も、真田社長には丁寧にお辞儀をする。
「お久しぶりです。真田社長」
梓も一緒にいらっしゃいませと頭を下げた。
「お邪魔します。出来上がりを楽しみにしてきましたよ」
白髪交じりの短髪頭に縁なしの眼鏡、そして年齢の割にスタイリッシュでお洒落、そしてニヒルな笑み。渋いおじ様である真田社長は老舗の社長とあって、そこにいるだけで重厚感がある。
「申し訳ない。本日は甥も一緒に連れてきました。宇和島に嫁いだ姉のところの息子です」
その社長が、後ろに控えている背が高い男性を『甥です』と紹介した。さきほど、黒いセリカの運転席から降りてきた男性。
真田社長ほどお洒落ではないけれど、シンプルなデニムパンツスタイルで爽やかな男性だった。それでも梓から見れば『三十後半、四十歳ぐらいかな』と感じる中年男性だった。
「真田の甥、松浦と申します」
彼も楚々とお辞儀をしてくれる。琴子先輩も本多先輩も、真田社長が親戚を連れてきて戸惑っていた。
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