第六章 きっと、大丈夫

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運命のことを質問されたって、わかるわけがない。けれどなにか、嫌な予感だけは感じる。 そう、「いたずら」なんて一言ではとても片づけられないような、現実が待っていた気がする。 「まさか……」 紡さんは小さく頷く。まるでこの予感は正解なんだ、と言うように。それから重い口を開いた。 「まず咲結様は、自殺する運命でした。椿様にいじめられ、死にたいと思い詰めたことが動機です」 淡々とした口調で紡さんは言った。 それを聞いた咲結が「やっぱり」と声をあげる。 思えば咲結をロッカーから助けた時、もう少し遅ければ死んでた、ってそんなことを言っていたような気がする。 端から見たら強そうな女子。でも根っこは臆病。それが私の知る梅野咲結。そのことを他に知っている人は私の他に、この高校では仁菜ぐらいだろう。 「次に、椿様は咲結と同じく、自殺する運命でした」 理由は言われなくともわかる。母からの虐待とお祖父さんの自殺からだ。 それを聞いた椿はわかっていたように大きく頷く。 ついさっきも容赦なく、実の父にげんこつを食らわせてたから、相当の辛い現実だったはずだ。 そして……。 「最後に、同じ日に自殺を図った仁菜様と胡桃様ですが……」 私が一番気にしていた運命だ。とてつもなく嫌な予感を感じて、額には冷や汗までかきそう。 唾をごくりと飲む。それから一言たりとも聞き逃さないように、耳を澄ました。 「未練解消もできず、ふたりとも地縛霊となり、様々な人を不幸に追いやってしまう、そんな運命でした」 沈んだような目をして、紡さんは言った。 確かにそうなるんじゃないか、という予想はしていた。けれどいざ本当だと知ると、足がすくみ、言葉を失った。 やがて胸の奥から込み上げてきた何か。それは大きな安心感。本当に咲結や仁菜、椿、そして自分自身を、不幸な運命から救うことができて、よかったと心の底から思った。 「私は四人がたどり着く運命を知り、あまりにもひどい、どうにか変えたいと長年頭を抱えていました。と言っても十年ちょっとですが。そんな時に仁菜様から頼まれて、私のためにも全力を尽くしたのです」 そういってこの結末に満足感を覚えているような笑みを浮かべた。 運命は変えられた。 紡さん含め、それぞれが勇気ある行動起こしたことで。 『努力は必ず報われる』 名言みたいなお祖父さんの口癖が今、本当だと私の中で証明されたような気がした。 「紡さん、この度は私達のために動いてくれてありがとうございました。このご恩は一生忘れません」 私が頭を下げるのを見て、椿も咲結も頭を律儀に下げる。 「そう言われましても副作用で忘れてしまいますが、どういたしまして」 どこか切なげに笑って紡さんは言った。
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