010『……そして驚いた』

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010『……そして驚いた』

まりあ戦記・010 『……そして驚いた』     えーーーーなんで!?  玄関ドアを開けるなり、みなみ大尉は叫んだ。 「ウップ!」  大きなマンションであることに素直に喜んでいたマリアは大尉の背中にぶつかりそうになってつんのめった。 「あたしの家って2LDKなのよ! それが、なんで壁ぶち破って4LDKになってんのよ!?」  確かにリビングは16畳ほどもあり、リビングの天井はど真ん中に梁が走っていて、元々は別の部屋であることが偲ばれる。  徳川曹長は「手を加えた」と言っていたけど、それが、この壁をぶち抜いたことであるならスゴイことだ。 「でも、きれいに片付いていますね……」  まりあは実質一人暮らしであったこともあり、整理整頓はきちんとする性格なので感心している。 「あたしの趣味じゃないわよ! あたしは散らかって……機能的になってないと落ち着かないのよ!」 「機能的なんじゃないですか?」 「どこがよ!?」 「えと……キッチンは対面式のアイランドだし、リビングとの動線もスムーズになって……家の中は完璧なバリアフリーですよ!」 「バリアフリーにしなきゃならない? あたし、まだ二十五歳なんよ?」 「リモコンが一つもない……て、もしかしたら?」  マリアは目ざとくテーブルの上の人形に目をやった。人形は二頭身半ほどで、なんだか大尉に似ている。 「リビング、電気」  マリアが言うと、人形は顔を上げて『ラジャー』と応え、同時にリビングの照明が点いた。 「窓開けて」 『ラジャー』  ベランダに向いたサッシが静かに開いた。 「すごい、これって、家じゅうの家電とかを操作するインタフェイスになってる!」 「それがどーして、二等身半のあたしになってるのよ!」  それから家じゅうのあれこれを点検し「すごい!」と「なんで!?」を連発する二人だった。  あれ?  自分の部屋をチェックして、まりあは驚いた。 「あたしのベッド、大きすぎないかなあ?」 「ん……ほんとだ、ダブルベッドじゃん」 「なんでだろう?」 「まりあ、寝相悪いんじゃないの?」 「そっかなあ……え、なんで!?」  クローゼットを開いて、いっそう驚いた。 「あたしの服、同じものが……みんな二着づつある?」  俺でも見覚えのある衣類がみんな二人分になっている。 「あたしのは自分の分だけだよ、片づけられすぎてるけど」  その時、玄関でガチャリと音がして、聞き覚えのある声で「ただいまー」が聞こえた。 「え、今のって?」  不思議に思った二人はリビングに戻った……そして驚いた。  リビングにはコンビニの袋をぶら下げた、もう一人のまりあが立っていたのだ。
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