007『突っ込みます!』

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007『突っ込みます!』

まりあ戦記(神々の妄想) 007『突っ込みます!』      あたしが生まれる三年前にヨミが現れた。  2033年に突然現れたと一般には言われているけど、お父さんは予見していた。  東京を中心に地磁気に異常が現れたのは、ヨミの出現の二年前。幕下大学の准教授だったお父さんは「近々とんでもないものが、東京の上空に出現する。それは、とてつみなく禍々しく暴力的な存在で地上に壊滅的な打撃を与えるだろう」と予言した。  でも、誰も信じなかった。  地磁気の異常は首都圏全域で見られたが、政府も学者も地磁気の乱れは南海トラフ北端部のプレートにストレスが溜まっているためで、心配すべきは津波を伴う巨大地震だと説明していた。  しかし、過去の巨大地震に比べると地磁気の乱れが異なっている。お父さんは、そう説明したが三流大学の准教授の言うことには誰も耳を貸さなかった。ただ東京オリンピックの年にゴジラの最新作を作った荻野目監督が「ゴジラの設定をした時の地磁気の乱れとソックリである」評論した。  けっきょくは2040年、東京上空に現れた未確認攻撃体によって、東京と、その周辺は壊滅的な被害をこうむった。  放射能被害こそは無かったが、被害規模は15メガトンの水爆に匹敵した。  ただ、規模の割に被害者は一万ちょっとと少ない。未確認攻撃体が出現して攻撃が行われるまでには数日のタイムラグがあって、かなりの人たちが避難できたからであった。  この未確認攻撃体は、三回目の攻撃を終えた後、突然分解して地上に落ちてしまった。  荻野目監督は「まるで古事記に出てくる黄泉の国の使いのようだ」とツイッターに書きこんだので「ヨミ」というのが未確認攻撃体の名称になってしまった。  お父さんを笑う者は居なくなった。 「これは前兆に過ぎない、ヨミは再び現れる」と予見し、政府は憲法改正によって軍になったばかりの自衛隊に招へいした。  お父さんは、放棄された東京周辺に落下したヨミの構成物質を集め、人工ヨミと言っていいウズメを作り上げたのだ。  ウズメがリフトから射出され高度15000メートルに達するまでの間に、マリアがヨミのライブラリーから読み取ったことが以上の事だ。  まりあが読み取った情報は100テラバイト分あったが、その内容を理解するにはホトケさんである俺の能力を超えている。 ――まりあ、オールウェポンフリーになったわ、なにをチョイスする?――  ベースのCICからみなみ大尉が呼びかけてきた。ウズメのウェポンは旧東京の三十三か所で格納されている。射出されてから観測される最新情報によって、CICとマリアによって選択される仕組みになっている。 「このヨミには、どのウェポンも通用しないみたい。あと三十秒でヨミは再起動して手が付けられなくなります。だから突っ込みます……」 ――ダメ、自爆攻撃は認めない! ウェポンを使って再起動を遅らせて!―― 「それだとキリがない。突っ込みます!」  まりあは頭をコクピットが内蔵されている頭部を両腕で庇うようにするとウズメをヨミに向かって突進させた。 ――まりあ! 引き返し……――  みなみ大尉の指令が届ききる前に、再起動寸前のヨミに体当たりした。  東京湾に巨大な火球が膨れ上がり、数秒後に収縮して消えたあとにはヨミもウズメの姿も消えていた。
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