黄昏虫がやってくる

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生き物が死んだらどこへ行く。生き物が死んだらその先はどうなる。誰も知りえないし興味もない。 死んだら最期、はい、それまでよ。僕はそっち系の考えの持ち主だ。 私は神のみ教えに従う覚悟を決めました、あなたも死後の救済が確約されるでしょう。さぁ、亡くなった大事な人にまた会いたいのなら共に神のみ教えを学びましょう。 一緒に?はぁぁ?誰が書いたかも知らない教本読む暇あったら海岸のゴミ拾いした方がよっぽどいい。 だいたいさ、救ってやっから言いなりになれっておかしいでしょ。神、どんだけ独裁者。 その点、仏さんはまだ許容範囲。 お経は死人のためじゃなく生きてる僕らに向けられてるもんだと和尚が言った。人が死んだら悲しい、けれど悲しみながら家族と支えあい生きていきましょう、的な。つーか、この和尚は早朝決まって道のゴミ拾いをしている。仕事帰りまだ薄暗い中、僕に“お疲れ様、ゆっくり休むんだよ”なんて言いやがる。和尚びいきになるだろそりゃ。 人でごった返す休日のアーケード内。10分半額タイムセールだと妙なアクセントで声を張るSHOPのお姉さん。八百屋のおっちゃんが買い物客相手にガハハと笑い、クレープとキャラメルポップコーンの匂いが混ざって甘ったるさ全開。出口がやっと見えてくれば噴水の周りで大はしゃぎする子供の群れ。 携帯会社がそこで配りまくってた風船が赤、青、黄、緑と原色を放ちまくる。 うっさいし匂いも強烈、そのうえ休日返上で客とデート。久々の日光は殺戮光線レベルで僕を焼く。 「やっほー、春馬」 腕をもぎとらんとばかりに気配を消し突如彼女は現れた、僕の右腕に。物理的、かつ心理的襲撃は効果絶大。なんつー殺傷力。 「こんにちは。今日はデートのお誘いありがとう、知恵さん」 唯一、この強烈な日光から僕を守ってくれていたサングラスを外し心理技官の先生がみっちりレクチャーしてくれた笑顔を作ってみせる。 「あはは、昼間見る春くんも素敵だねー。あ、でも、もう少し日焼けした方がいいよ?真っ白じゃん、マネキンみたい。お店で見ると全然分かんないのに、照明力すごーい」 蝶が飛んでいる。子供らが散らした噴水の欠片に一匹のアゲハチョウがとまったり、また羽ばたいたりを繰り返している。
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