プロローグ

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 ぽつんと佇むその家は、一種異様な雰囲気を纏っている。  入り口の戸は開け放たれており、時折風に煽られ軋んだ音を立てた。  酷く天井が低い土間に入ると、汚らしく破れた障子、そしてそこから続く暗く日が差さない部屋が伺える。  黴臭く苔むしたその部屋に、壁に背をもたせ掛けたひとりの少女が座っていた。  少女はぼんやりと生気のない目を、足下に落としている。  視線の先には、異様な身体をくねらせながら畳の目の間で蠢くイモ虫がいた。  少女はしばらくそれを見つめていたが、小さな手で無造作に掴むと目の前に掲げた。握りしめた掌の隙間からはみ出た太い虫の胴体が、左右に激しく動く。  少女はじっとそれを見つめている。  と、何を思ったのか少女は虫を畳の上に置くと、頭の部分を押さえる。  手には、古ぼけた小刀が握られている。  少女は錆び付いた刃を虫の胴体に当てると力を入れた。  蠢くイモ虫の胴体が千切れると、ブチッと音がして緑色の体液が畳に飛び散った。  その様に(ひる)む様子も見せず、少女はイモ虫を三等分に分ける。  切り分けたイモ虫の残骸を掴むと、少女は立ち上がり裸足で家から出た。  家の裏手に回ると、小さな畑があった。  かつては芋などを植えて僅かながら収穫が望めたものだが、今はただ立ち枯れた雑草が蔓延るだけの場所だ。
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