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少女は、その畑に無造作に裸足のまま入っていくと片手で土を掘り返す。
手に持ったイモ虫の残骸をひとつ、そこにポトンと落とすと上から土をかけて埋めた。
場所を変えて残りの残骸も全て埋める。
作業が終わると、虚ろな表情で暫くそこに立ち尽くす。
少女の汚れきった身体からは饐えたような臭気が漂っていた。
着ている粗末な服も汗や垢などの汚れでドロドロとなっており、もはや当初の柄や色も判別できぬほどであった。
髪の毛も所々シラミを浮かせていて、黒く垢が溜まった長い爪で執拗に掻くものだから頭の表皮に血を滲ませている。
枯れ木のように痩せた手足には、質の悪い毒虫に咬まれた痕があちこちにあり、黒ずんだ肌には赤黒く変色した痣があった。
中には黄色い膿を滴らせている疵もあった。
手首や足首には、縄で縛られたような赤黒い蚯蚓腫れが目を引いた。
少女は踵を返すと、ふらふらとした足取りで家の中に入っていった。
畳の上に座ると、また惚けたような表情で視線を中空に漂わせじっと動かない。
部屋の中は閑散としていて、真ん中に切ってある囲炉裏も火の気は無い。
その囲炉裏の奥から、力無い呻き声が聞こえた。
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