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ざんばら髪の主は、ぼうぼうに伸びた前髪の下の血走った目を辺りに這わせる。
異様な臭気を漂わすボロボロの服は胸元が大きくはだけ、肋骨が浮き出た胸は薄いが何とかそれが女とわかる。
女は身体を家の中に入れた。
顔は汗や垢で斑になるほど汚れており、まるで苔でも生えているかのように見えた。
目だけは異様な光を帯びている。
まるで老婆のような姿だが女はまだ若い。
女は少女たちの母親だった。
かっちゃあ、はらへった。
姉は母親の姿を認めるとヘラヘラと笑いながら云った。
妹は思わず姉の身体を抱きしめる。
建付の悪い戸を苦労して閉めていた母親の目が、陰湿に細められた。
母親は玄関の土間に放ってあった太い薪を掴むと、ミシリ、ミシリと畳を鳴らし少女たちの所へ歩み寄る。
姉は相変わらずヘラヘラと笑いながら母親を見上げた。
食い物なんかあるかい!
母親は姉の服を力任せに掴むと、部屋の隅から引きずりだす。
姉の身体にしがみつく妹の身体も一緒に引きずられた。
母親はふたりの少女の身体を無造作に囲炉裏端に放り投げると、掴んでいた薪を振り上げた。
満身の力を込めて少女たちに打ち下ろす。
ひいいいいいいいいい!
堪らず姉が悲鳴を上げた。
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