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「吉村課長って」
何故か美奈子はギクリ、とする。
「な~んか高橋先輩に絡んでくる気がするんですよね」
「え、いや…それは君の誤解だと思うよホント」
素っ気なく答えて、長谷川を見ると、彼はにっこり笑って言う。
「でも、あんなに先輩が酔うなんて思わなかったな」
「…反省します…職場では抑えてたのにな」
「じゃあ基本、酒癖悪いんですね」
「いや、っていうか…課長が一言とか言うから緊張してさ」
くす、と長谷川が笑う。
「僕、先輩のこと送ろうと思ったんですよ、金曜日」
「あはは…ごめん…」
本当に反省する。ごめんなさいとしか言えないよ…
「僕が抱えて駅まで行こうとしたら、先に二次会で行ったはずの課長が戻ってきて。方角が違うだろう、って。私に任せて帰りなさいって言われたんですよねぇ」
「え、マジ…で?」
真剣な顔で長谷川は聞く。
「まさか、課長って高橋先輩送りたかったとか、無いですよね?」
いや、知らない!っていうか吸血された…いや、それも妄想だったりして?
だとしたら何!?私課長とやっちゃってたりしないよね!?あの吸血鬼は夢で、実は現実では…とか?
「イヤイヤ!ナイナイ!無いから!あの課長に限って」
「ですよねぇ~」
はあ、とため息をついて長谷川は言う。
「僕が送りたかったですよ、本当は」
「いや本当…謝ることしか出来ないよ…勘弁してよもう…」
「だって、そしたら高橋先輩の弱みを握って、逆パワハラとか?できたりして」
ははっ、と長谷川は笑う。
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