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「でも!私はどんな時でも維盛様のことを忘れたことなど一度たりともなかった!こうして再び会えたのですから恨み言の一つや二つ、言いたくもなるでしょう?」
「僕は何を言われてもしょうがないんだ。どんな事情があったにせよ、お前たちを何十年も放っておいたのは事実なんだから。なぁ、凪子。僕はどうしたら許してもらえるだろうか?」
「許しません!」
凪子はキッパリと言い捨てた。
―無理もない、何十年もほったらかしにしてきたのだ。それを簡単に許してもらおうって方が虫のいい話だ。
「許してもらえない、か…」
維盛は目に見えてがっくりと肩を落とし、子犬のようにしゅんとした。
昔から彼は凪子を愛するがゆえに彼女のたった一言に振り回されてきたのだ。
―あぁ、年をとってもこの人のこういうところは変わっていないのね。
お互い年を取ってしわくちゃにはなったけれど、中身はあの頃のまま変わっていない。
「弥助様はあの頃と変わっていませんね。私の一言で一喜一憂して、やっぱり私が大好きだった維盛様のままです」
「そうだろうか?」
成長していないのならそれはそれで悲しい気もするが。
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