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そんな様子をそばで見ていた一姫は転がった鞠を拾い上げる係だ。
まだ体が小さくて六代のようにできないけれど、着物が汚れるのも気にせず転がる鞠を追いかけることに全力を注いでいる。
たまに転びそうになって冷や冷やするが、そんな様子がなんとも可愛らしかった。
「きゃっ!」
「大丈夫か、一姫」
鞠を必死で追いかけるあまり尻もちをついた一姫に維盛が優しく声をかけた。すると彼女は両手に抱えた鞠を嬉しそうに差し出した。
「あい!ちちうえ!」
「お、僕にくれるのか?鞠を拾って偉いな」
維盛は素直に鞠を受け取り、一姫の頭を撫でた。
すると彼女は得意げな顔をして満足そうだ。
凪子はそんなやりとりを見つめながらなんて微笑ましい場面だろうと自然と微笑みが零れた。
「よし、じゃあ六代。もう一度やってみよう」
「はい!」
維盛を経由し六代が蹴り上げた鞠は大きく弧を描いて凪子の手にすっぽりと収まった。
「あら」
「ははうえ、じょうずー!」
「六代もいい狙いだ」
「狙ったわけじゃないもん!」
「凪子もまぜてやろうと思ったんだろう?」
維盛は六代をからかい、あたりが笑いで溢れた。
そして何度も繰り返すうちに六代もコツを覚えてきたらしく、上手く蹴れるようになってきた。
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