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「六代、随分と上手くなったな」
六代は褒められて嬉しかった。
だが、それで少し気が緩んだのだろう。
蹴り上げた鞠が弾みで一姫の背中に直撃してしまった。
「!!」
急に鞠が背中に当たって一姫は驚きと痛みで泣き出してしまった。
まさに大泣きである。
「一姫!」
「うわぁぁぁん!」
維盛は慌てて一姫のそばに駆け寄ると彼女の体を抱き上げた。
そして彼女の小さな背中を優しくさすった。
「痛かったな。ごめんな?」
泣きじゃくる一姫をなだめながら、維盛はちらっと凪子を見た。
―怒ってる…だろうな。
案の定、凪子はそれみたことかとわずかにムッとした表情を浮かべている。
「凪子、すまない。一姫を泣かしてしまった…」
「いつかはやると思ってました」
「これでも気を付けていたつもりだったのだが」
「まぁ、わざとやったわけではありませんし、仕方ありませんね」
そういって凪子は呆れたようにため息を吐いた。
―わかっている。これくらいの事故はつきものだって。それに…
ふと、一姫に視線を向けるとさっきまで大泣きしてた彼女は維盛の腕の中ですっかり機嫌を直していた。
きっと維盛に抱きかかえられて嬉しかったに違いない。
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