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時は遡って1158年、京都六波羅小松谷・平重盛(たいらしげもり)邸。
平清盛の嫡男(ちゃくなん)・平重盛の元に1人の使者が訪れた。
それは訳あって里邸に出している妻の実家からの使いだった。
もしやと思い、慌てて重盛が出迎えると使者は開口一番に声を高らかに言い放った。
その顔にはわずかながら笑みが浮かんでいる。
「申し上げます!御子がお生まれになりました!!」
重盛は待ちわびた吉報に満面の笑みを浮かべた。
齢20歳にして待望の第一子の誕生である。
そう、重盛は朝からこの報をそわそわしながら今か今かと待っていたのだ。
「そうか!ついに生まれたか!」
「おめでとうございます!」
彼は使者の肩を掴むと待ちきれんばかりに捲し立てた。
「して、子は女か男か!?」
当時の平安貴族にとって生まれてくる子供の性別は重要だった。
多くの場合、初子には女子が望まれ、それは重盛も例外ではなかった。
しかし…
「男子にございます!」
その報せを聞いて重盛はわずかに落胆の色を見せる。
「そうか、男か…」
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