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今日は12月24日。クリスマスイブ。
俺は駅前で和哉を待っている。
家まで迎えに行くよ、と言われたけど待ち合わせに方がデートっぽいから断った。
ちなみに恋人として和哉と出かけるのは今日が初めてだ。
「瀬凪!お待たせ。待った?」
「待ってない」
「ん。よかった。じゃ、行こ」
そう言って俺に手を差し出してくる。
いつもなら手なんて繋がないけど、今日だけは特別だから。
俺はその手に自分の手を重ねて握る。
和哉はゆっくり歩き出し、俺もそれに着いていく。
「どうする?とりあえず何か食べよっか」
「ああ。何にする?」
こんな時、何にすればいいか分からない。
というのも、俺の人生で唯一できた彼女とはデートしたことがない。
付き合ってお互い部活で忙しいまま、彼女から別れを切り出されてしまった。
ということで、ここは和哉に任せるしかない。
「和哉は何がいい?」
「俺?そうだな…」
和哉が考えている間、周りを見回しているとある看板を見つけた。
ハンバーグ…。
そこは普通のファミレスだが、庶民的な俺の心をキャッチした。
それに気づいてくれた和哉が「あそこがいいの?」と聞いてくれたから、俺は頷く。
結局そこに入り、俺は大盛りのハンバーグを食べた。
と、食べ終わった後に気づく。
デートなのにこんなんでいいのか…?
ファミレスで大盛り食っていいのか…?
俺が少し後悔をしていると、強く冷たい風が吹いた。
「寒っ!」
「ね。…じゃあ家くる?瀬凪ん家より近いし」
和哉はちょっと顔を逸らして言う。
心做しか顔が赤い。
これはそういう事か…?
ひとり暮らしの恋人の部屋に行くのはそういう事か…?
「う、うん」
和哉の家なんて何回も行っているはずなのに俺は少し緊張しながらそう返事した。
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