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Episode.5 兄
『もうすぐバレンタイン!ということで今日はバレンタイン特集です!今日のゲストの宏哉くんはもらう予定ありますか?』
『いやー全くないんですよねー』
あはは、と自嘲するように笑うこの人。
今をときめく大人気アイドルの阪宮宏哉だ。
「あ、兄さん」
何を隠そう和哉の実の兄だ。
ちなみに和哉の両親も芸能人。
イケメンずるい。このα家系め。
宏哉さんは朝に似合う爽やかな笑顔を浮かべている。
まだ23歳ながらデビュー6年目。
コンサートのチケット完売は当たり前。
メンバー全員が引っ張りだこ。
熱狂的なファンも多い。
「てか、バレンタインか〜。…瀬凪はくれたりしない?」
「はあっ!?」
後ろにいた和哉にそう言われ、勢いよく後ろを向く。
「くれないの?」
「いや、き、気が向いたらな!」
「やった」
実はあげようと思っているが、恥ずかしくて素直には言えない。
それでも喜んでくれたから、絶対あげよう。
家を出る前、俺があげたマフラーをつけている和哉を見て嬉しくなる。
あげたのは結構前だし、毎日つけてるからもう見慣れてもいいんじゃないかって思うけど、やっぱ嬉しいもんは嬉しい。
「ねぇ、瀬凪。今日大学終わったら遊びに行こうよ」
「いいよ。どこ行くんだ?」
「内緒ー」
駅までの道を歩きながら、そんな話をする。
手袋をつけていない手はヒヤッとしてるけどすぐ暖かくなる。
俺の少し前を歩く和哉の背中を見ながら、駅までの道をゆっくり歩いた。
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